垂足三角形
[定義](狭義)
△ABCにおいて、A, B, Cから対辺に下ろした垂線の足をD, E, Fとするとき、△DEFを△ABCの垂足三角形(orthic triangle)という。
[定義](広義)
△ABCにおいて、点PからBC, CA, ABに下ろした垂線の足をD, E, Fとするとき、△DEFを点Pの垂足三角形(pedal triangle)という。
点Pが垂心のときが狭義の垂足三角形に当たる。
[定理1]
鋭角三角形の垂心は、垂足三角形の内心と一致し、
鈍角三角形の垂心は、垂足三角形の傍心と一致する。
(鋭角三角形の場合)
[証明]
△ABCの垂足三角形を△DEF, 垂心をHとする。
△ABD∽△CBFより∠BAD=∠BCF …(1)
□AFHEは円に内接するから、∠BAD=∠HEF …(2)
□HDCEは円に内接するから、∠BCF=∠HED …(3)
(1), (2), (3) より∠HEF=∠HED
同様に、∠HFE=∠HFD, ∠HDF=∠HDE であることが示されるから、
△ABCの垂心Hは△DEFの内心と一致する。
(鈍角三角形の場合)
[証明]
△ABCの垂足三角形を△DEF, 垂心をHとする。
△ABDは∠ADB=90°の直角三角形より∠BAD <90°
△ABEは∠AEB=90°の直角三角形より∠ABE <90°
△BHDは∠BDH=90°の直角三角形より∠BHD <90°
よって△ABHは鋭角三角形で、△DEFはその垂足三角形になっているから、
FC, EC, DCはそれぞれ∠EFD, ∠FED, ∠FDEの内角の二等分線で、
また、EC⊥EH, DC⊥DHよりEH, DHはそれぞれ∠FED, ∠FDEの外角の二等分線であるから、Hは△DEFの傍心となる。
[定理2]
鋭角三角形に内接する三角形のうち、周の長さが最小になるものは垂足三角形である。
[証明1]
BC上に点Dを固定し、ABに関してDと対称な点をP, ACに関して対称な点をQとすると、
DF+FE+ED=PF+FE+EQ よりP, F, E, Qが一直線になるとき△DEFの周は最小になる。
次に、点DがBC上を動くとき△DEFの周(=PQ)を最小にするには、
∠PAQ=2∠BAC(一定), AP=AQ=ADより、ADを最小にすればよく、それはAD⊥BCとなるときである。
同様に、E, FについてもBE⊥CA, CF⊥ABとなるとき△DEFの周の長さを最小にするから、
△ABCの垂足三角形が求める三角形となる。
[証明2](シュワルツによる証明)
図のように、△ABCをBC→CA'→A'B'→B'C'→C'A''の順に5回折り返す。
ABの回転角を順に全て加えると、時計回りを正として+2β+2α+0−2β−2α=0 より、AB // A''B'' となる。
また、△ABCの垂足三角形を△DEFとすると、F, D, E', F'', D'', E''', F'''' は一直線上に並び、FF''''=(△DEFの周)×2 …(1)
一方、△ABCに内接する三角形のうち、△DEF以外のものを△PQRとすると、
FRとF''''R'''' は平行でその長さが等しいから□RR''''F''''Fは平行四辺形であり、RR''''=FF'''' …(2)
RR''''<RP+PQ'+Q'R''+R''P''+P''Q'''+Q'''R''''=(△PQRの周)×2 であるから、(1), (2) より△DEFの周 <△PQRの周となる。
[補足]
直角三角形、鈍角三角形の場合は、内接三角形の周の長さの最小値は存在しない。
[定理3]
鋭角三角形△ABCの面積をS, 外接円の半径をRとすると、
[証明]
また補題1よりAH=2OM=2RcosA
∴EF=2R sinA cosA=R sin2A
垂足三角形の周の長さは、
EF+FD+DE=R(sin2A+sin2B+sin2C)=4R sinA sinB sinC (∵補題2より)
[補題1]
△ABCの垂心をH, 外心をO, BCの中点をMとすると、AH=2OM
[証明]
AからBCに下ろした垂線の足をD, CからABに下ろした垂線の足をE, BOの延長線と外接円の交点をFとする。
BFは直径よりFC⊥BC, FA⊥AB よって、AH // FC, CH // FA
よって□AHCFは平行四辺形なので、AH=FC
△BOM∽△BFCで相似比が1:2よりFC=2OM
ゆえに、AH=2OM
[補題2]
△ABCにおいて、sin2A+sin2B+sin2C=4 sinA sinB sinC
[証明]
sin2A+sin2B=2 sin(A+B) cos(A−B)=2 sinC cos(A−B)
sin2C=2 sinC cosC=−2 sinC cos(A+B)
よって、
(左辺)=2 sinC{cos(A−B)−cos(A+B)}=2 sinC・2 sinA sinB=4 sinA sinB sinC